カポエイラ(ポルトガル語: Capoeira)は、ブラジルの腿法。相手に蹴りや攻撃を当ててしまうものは下手とされ、基本的に相手には触れず、プレッシャーをかけてゆく。そのため、格闘技とダンスの中間に位置するものとも考えられている。
日本では梶原一騎が自書の作品で『逆立ちしながら闘う格闘技』と紹介した為に、長年誤解されてきたが、常に逆立ちのような体勢をとるのではなく、足を地面に付けていることのほうが多い。
1500年4月22日、ポルトガル人のペドロ・アルヴァレス・カブラルはブラジルを発見し、ポルトガルはブラジルを植民地化した。ポルトガル人はパウ・ブラジルの枯渇後、サトウキビなどのプランテーションを耕作させるための労働力としてアフリカ大陸のアンゴラやコンゴ、モザンビーク、西アフリカから多くの黒人を連行して人身売買を行い、黒人は奴隷として酷使された。カポエイラの源流は未だに不明な点が多い。アフリカの土着格闘技として、すでにこの頃よりも以前に存在していたと言われる他、インディオがカポエイラをしているのをポルトガル航海士マルティン・アフォンソ・デ・ソウザが目撃していると言われている。カポエイラ界では、今のところカポエイラはアフリカではなく、ブラジルで生まれたという説が多く支持されている。よって、アフリカからブラジルに伝播した文化的要素がカポエイラに影響を与えた可能性はあるにしろ、アフリカ起源というのには語弊がある。例えば、奴隷小屋(senzala)は、宗主国ポルトガルやアフリカには当然存在せず、そうした特異な環境がカポエイラを生み出していったと考えられる。
また、カポエイラの基本ステップ、ジンガが速さと足の間隔の違いがあるにせよ、サンバの基本ステップに酷似している。サンバの原型が輪になって中心にダンサーが飛び出して踊ること、もともとのサンバの原型が胸をつきだして踊るなど、サンバとの関係が深い。
1808年1月23日にリスボンからリオデジャネイロにポルトガル王室が移転したため、ポルトガル・ブラジル連合王国が樹立され、ポルトガル王ジョアン6世とブラジル皇帝ペドロ1世は、1808年から1831年まで特別警察を設置、アフリカ文化の抑圧を行った。1888年5月13日に黄金法によって奴隷制は廃止されたものの、その後も解放されたアフリカ系ブラジル人の元奴隷への差別は依然として続き、カポエイラは権力に抵抗する手段とみなされ1892年から1932年まで禁止されていた。
こうした背景の中、カポエイラは黒人奴隷が、看守にばれないようダンスのふりをして修練した格闘技といわれる。手かせをされていた奴隷が、その拘束をとかれないまま鍛錬した格闘技の為、足技を中心に発展したとされるが、これは後世の想像と見られている。
現在は空手やテコンドー・ムエタイ等の他国の格闘技との技法交流に伴い拳法技術を用いた技法も導入されたため、足技だけの格闘技ではなくなっているが、手による攻撃は依然少なく、地面に手をついて蹴ったり、逆立ちをしたり、アクロバティックな独特の動きを持つ。
ブレイクダンスなどにも影響を与えた。また、踊りの練習をしているように見せかけるため、音楽とともに練習したと言われており、ビリンバウやパンデイロ等の楽器をつかった伴奏が付き物である。
日本では、ダンスユニットのDA PUMPも習っていた。
一部ではナイフ術が併伝されている。ジンガの動きから刺しに行く技が幾つかあるほか、ナイフを指に挟んで蹴るナイフ蹴りがある。これらの技もバイーアで生まれたとされる。
ヘジォナウ(Regional)
1928年にメストリ・ビンバ(Mestre Bimba、本名:Manuel dos Reis Machado)が多くの格闘技を研究し、創始した。より格闘技的なスタイル。創始した当時はさほどではなかったが、激しくアクロバティックな動きも特徴。一般的に知られているカポエイラはこちらの系統の流派。屋内でカポエイラ教室を初めて開き、1930年代にはブラジル北東部のバイーア州サルヴァドールで世界初の道場を開校した。当時の独裁者ジェトゥリオ・ドルネレス・ヴァルガス大統領によるブラジルのナショナリズム称揚と国民文化を見直す運動が強まる中、上流階級の子弟までもがカポエイラを習い、また、ヴァルガスに招かれてデモンストレーションを行ったことからも、ビンバは奴隷の文化からのカポエイラの地位を向上させた存在といえる。
アンゴーラ(Angola)
メストリ・パスチーニャ(Mestre Pastinha、本名:Vicente Ferreira Pastinha)がまとめた流派。彼は奴隷でない身分の者にもカポエイラを教えた革命児。カポエイラの師であるアフリカ人ベネジートの出身地だったブラジルのアンゴーラ地方(この地方の名前はアフリカのアンゴラに由来する)から名前をとった。儀式的でどちらかといえばゆったりした動きが特徴。飛び跳ねるような派手な動作はあまり行わず、動物の動きをまねたアフリカ土着の格闘技に近い。パスチーニャは1941年にサルヴァドールでアンゴーラの本格的な道場を開いた。
技名
ジンガ(ginga)……「よちよち歩き」の意味。他の格闘技の構えに近い、カポエイラの特徴的なステップ。腰を落とし、顔面を防御しつつ左右に体を移動させる。サンバのステップとも同じで、サンバのステップはジンガを速めたものになる。
ケイシャーダ(queixada)……あごへの蹴り。
アルマーダ(armada)……「艦隊・海軍」を意味する蹴り。
アウー(aú)……側転。動作中は地面についた手を見ずに、相手を見続けることが特徴。
フォーリャ(folha)……「葉っぱ」を意味するアクロバティックな蹴り技。
マカーコ(macaco)……「猿」を意味する、しゃがんだ状態からのバク転。
カベサーダ(cabeçada)……頭突き。
マルテーロ(martelo)……「ハンマー」を意味する上段蹴り。
ハステイラ(rasteira)……足を引っ掛けて倒す技。
ベンサォン(benção)……前方押し蹴り。「感謝」を意味し、腹部を蹴られた相手が、お辞儀をさせているようになることから名が付いたとされる。
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